現地拠点の立ち上げ(駐在員事務所・現地法人等の設立、人材確保)〜立ち上げ担当者必見〜

株式会社ラック
中国事業推進部

1.進出前の段階

(1)進出のための目的
  中国進出で成功するためには、進出目的を明確にする必要があります。
  例えば、優秀な人材確保、原材料確保、市場開拓、コストダウン等を挙げることができます。

(2)進出形態等を検討

  進出する目的を達成するための進出先(北・南・内陸・都市・郊外)と進出形態(独資・合弁・合作といった
  法人形態か、駐在員事務所などの非法人形態か)を検討します。

(3)販路確保の可否を調査
  市場開拓のために進出する場合は、販路の確保の可否を事前に調査する必要があります。
  合弁形態で進出する場合も、合弁先に丸投げするのではなく、
  自社で調査し、いざというときに自社で取引先を確保しうる体制を作っておく必要があります。
  自社で取引先を探せないような体制だと、合弁先のやりたいようにやられてしまう危険があるからです。

(4)現地における競争力を調査
  中国の市場を開拓する場合、価格競争に耐えられるかという問題に直面します。
  また、価格だけでなく、機動力や技術力といった部分で、いかに競争力を維持するか問題となります。

(5)情報の確認方法
  調査会社が実施している事業可能性調査を利用することも可能ですが、
  経営者自ら調査結果を確認し、様々な観点から検討する必要があります。

(6)進出先の選定
  選定の目安
    コストダウンを追求するなら郊外型開発区。インフラ等の便利さを追求するなら市内開発区がよいでしょう。
  郊外型の場合
    再開発計画による急な立ち退きの可能性、地元政府の対応等により、ビジネス環境が大きく異なってくるので、
    事前に確認する必要があります。
  日系企業へのヒアリング
    特に、郊外へ進出する場合は、そのエリアに進出している日系企業等からヒアリング調査をして、
    停電等のインフラ面の問題についての情報収集する必要があります。
  その他のチェックポイント
   ・工場を賃借契約する場合や土地使用権の売買契約をする場合は、契約書に立ち退き保障の明記します。
   ・個人所有の工場を買収もしくは賃貸する場合は、土地および工場の権利証およびその内容を確認します。
   ・現地の地方政府等とコンタクトを取り、その地域政府の体制や計画について情報収集し、分析を行います。



2.駐在員事務所の設立

(1)駐在員事務所について
  駐在員事務所の正式名称は「外国駐在代表機構」です。直接経営活動を行わない本社の代表機構と
  位置づけられています。
  営業収入はなく課税所得も発生しないはずですが原則課税となっています。
  駐在員事務所は、一定の要件を満たせば税務機関への申告により免税措置を受けられることになっていますが、
  実際は認可が下りないことが多くなっています。

(2)課税方法について

  駐在員事務所が課税対象となる場合、その課税方法として所得課税、推定利益課税、経費課税の3通りがあり、
  どの方法を適用するかは税務機関が決定すます。
  課税所得に対し企業所得税33%(国税30%と地方税3%)、収入額に対し営業税5%が課税されます。
  駐在事務所の企業所得税は、一定の条件を満たせば日本の法人税額から外国税額控除で
  差し引くことが可能(営業税は不可)。
  通常、駐在員事務所の利益率が大きい場合は経費課税が、利益率が小さい場合は所得課税が有利になります。

(3)駐在員事務所の設立手続きの流れ
  1) 受入機関を選定
  2) オフィスを選定
  3) 設立認可を申請
  4) 設立登記
  5) 駐在員事務所印を作成
  6) 組織番号証、首席代表の健康証明申請、就業証の申請、就労ビザと居留証の申請・取得、外貨登記、
     銀行口座開設、税務登記、統計登記、税関への届出



3.現地法人の設立

(1)現地法人について
  外商投資企業(独資、合弁、合作企業)、各種優遇税率が適用されています。
  生産型企業は、一定の条件を満たした場合は、
  繰越損失が消滅して課税所得が発生した年より2年間は免税その後3年間は適用課税率が半分(2免3減)
  となります。
  このうち国が指定した地域においては、優遇税率(24%以下)の適用を受けることができます。
  製品輸出割合が全売上高の70%以上を占める製品輸出企業・先端技術企業は、税務機関等の認定を受けた
  場合、適用税率が半分になる期間が延長されます。製品輸出企業の場合は、製品輸出割合が70%以上の年
  度が、先端技術企業では2免3減終了後3年間が、この優遇制度の適用を受けられます。
  非生産型企業の場合は、基本的に優遇税制を受けることができませんが、経済特区や保税区等の地域におい
  ては優遇税率が適用される場合があります。
  現地法人で委託加工を行う場合には、その負担が発生しない加工方式を選択できます。
  これには、関税・増値税を全く要しない来料加工方式と、関税・増値税相当額をいったん納付し、
  輸出後にこれを還付する進料加工方式などがあります。
  また、ハイテク産業の場合で、政府の科学技術部門と税務部門の認可を受けた場合は、実質負担率が6%となる
  ことがあります。この場合は、営業税についても、同様に免税となることがあります。

(2)現地法人設立の手続きの流れ
  1)  中国側のパートナー選定(合弁・合作の場合)
  2)  事業計画の作成・提出・認可
  3)  企業名称確認申請
  4)  臨時資本金口座絵を開設(必要な場合のみ)
  5)  企業化調査報告書を作成
  6)  合弁・合作契約書及び定款(企業章程)を作成
  7)  企業化調査報告書、合弁・合作契約及び定款(企業章程)の申請・認可
  8)  組織番号証の申請
  9)  設立認可の申請
  10) 設立登記
  11) 法人印の作成
  12) 外貨登記
  13) 資本金口座の開設
  14) 銀行決裁口座の開設(外貨口座、人民元口座)
  15) 資本金検査
  16) 税務登記
  17) 財政登記
  18) 統計登記
  19) 税関登記



4.人材確保について

(1)人材確保
  中国の就職事情
    ア.大卒者が急増
      中国では、大卒者が急増(2005年は338万人)しました。
      全体的にいえば、大卒者は、極端な就職難の状況にあります。
      大卒者の就職率、初任給が共に下がるという動きを見せています。
      とはいえ、大卒者の中で特に優秀な人材は、能力主義の制度が進んでいる欧米外資系企業に
      流れてしまいます。
      そのため、優秀な人材を日本企業が確保するのは、そう簡単なことではありません。
    イ.転職について
      中国では、転職が当たり前になっています。従来の日本企業に見られた終身雇用制という発想は
      ありません。現在の会社で働いている目的は、『好条件で転職するため』という人が多くなっています。
      優秀な人材に長く働いてもらうためには、それなりのメリットを与える必要があります。
    ウ.キャリア志向
      中国人には、日本人に多い大企業志向は弱いといえるでしょう。
      むしろ、仕事の内容(やりがい、スキルアップにつながるか?)や報酬という面を重視している人が
      多いえます。自分自身の価値を上げ、やりがいのある仕事や収入の高い仕事に就くことを目標として
      いるのが基本的なスタイルです。
      就業時間後に、スキルアップのために専門学校に通う人も、非常に多くなってきています。
      優秀な中国人を確保したいのであれば、このような中国人の考え方に十分配慮する必要があると
      いえるでしょう。

  不人気な日系企業
    日系企業は、人事の現地化、能力主義化が遅れているため、中国の学生に人気がありません。
    2004年の「就職先人気企業」についてのアンケートでは、欧米企業と比べて人気が離されているだけでなく、
    昨年と比べて順位も落ちています。

  採用方法
    ア.知人紹介
    イ.募集広告
    ウ.人材紹介会社を利用

  人材争奪戦に勝つために
    ア. 人材育成重視のイメージ作り 
    イ.教育研修制度の充実

(2)人材の育成

  人材育成の重要性
    中国においても、人材育成の成否は、企業の実行力をそのまま左右すると認識されるようになってきました。
    最近では、人材育成に力をいれている企業が多く、
    いわゆる勝ち組企業は、人材育成に成功しているところが多いといえるでしょう。
  目標設定
    中国人は、日本人以上に『やることの意味』を考える面があります。
    時には、『やることの意味』がないと独自に判断し、やるべきことをやらずに問題が生じることもあります。
    研修についても、『やることの意味』つまり目標をはっきりさせておく必要があります。
    例えば、企業の経営目標と社員個人の欲求を分析し、企業と社員の共同の研修目標を設定します。
    企業の競争力アップ、業績向上、昇進、昇給等を挙げることができます。

(3)人材の活用
  権限と責任の明確化
    ビジネスチャンスを逃さないために現地での即断即決を可能にする必要あります。
    そのため、現地の人材の権限を明確にするとよいでしょう。
    ただ、権限を付与すると不正が起きる可能性は日本以上であることも事実です。
    権限を付与する前に、権限行使のルールと現地に対する監査体制を構築する必要があるでしょう。
    不正行為に対しては、厳格に対応する必要もあります。
  人事と査定の公平性
    実績主義に基づく、公平な評価制度を導入します。
    外資系企業の中で、日系企業の人気が低い原因は、実績主義が進んでいないことにあるといわれています。
  信賞必罰主義
    仕事の成果に対するメリットをできるだけ具体的に示します。
    規則を守らなかったものに対するデメリット(罰則等)も明確に示します。
  肩書きの活用
    現地スタッフに役職を与え、モチベーションの向上を図ります。
    また、経営陣への道を開くことにより、優秀な人材の能力を最大限に活用します。
    成功している欧米外資系企業の多くは、優秀な現地人を重用しています。

(4)罰則について
  解雇
    よほどの背任行為等がない限り契約期間中の中途解雇は回避した方がよいでしょう。
    従業員に背任行為等の疑いが認められる場合、相手に気づかれないように動かぬ証拠を抑える必要が
    あります。やむを得ず中途で辞めてもらう場合でも、形式的には、依願退職の形式を採用したほうがよい
    でしょう。勤務態度(遅刻・無断欠勤等)を理由に会社を辞めさせたい場合は、契約を更新しないという形に
    するのが望ましいでしょう。
    この場合、契約を更新しない理由を、本人の納得いく形で説明する必要があります。
  その他の処分
    会社は、遵守すべき労働規律の違反者に対し罰金を課すこともでき、
    本人の給与から控除することができます。毎月の控除額は月額給与の20%までです。
    ただ、罰金制度等の罰則制度を導入するにあたっては、罰則の対象となる違反行為とそれに対する罰則を
    予め具体的に従業員全員に明示しておく必要があります。
    適用にあたっては躊躇せずに行うべきでしょうが、不必要に面子を潰さないように配慮すべきでしょう。
    罰則の目的は、社内秩序・会社財産を守るという会社の利益のためにあり、違反者を傷つけることが
    目的ではないからです。
    処分を受けた従業員に逆恨みされると会社を情報漏えい等の危険に晒すことがあります。

(5)労働契約
  労働契約の意義と内容
    労働契約とは、使用者と労働者の間の権利義務を規定する契約をいいます。
    必ず書面によらなければならないとされています。労働契約によって規定しなければならない項目は、
    以下の通りです。

  ・労働契約の期間
  ・労働の内容
  ・労働保護及び労働条件 
  ・賃金
  ・労働規律
  ・労働契約終了の条件
  ・労働契約違反に対する責任

  試用期間について
    労働契約を締結するに当たり、企業は6ヶ月以内の試用期間を設けて従業員の資質を確認することが
    できるとされています。
    試用期間内に採用条件に合致しないと企業側が判断した場合は、
    使用のための労働契約を随時解除することができるとされています。
    また、労働者側からも自由に労働契約を解除することができるとされています。
  雇用期間について
    期間については、(イ)期間の定めのあるもの、(ロ)期間の定めがないもの、(ハ)一定の事業の完了まで
    の間とするもの、があります。
    注意しなければならないのは、労働者が同一の使用者の下で10年以上継続勤務し、
    当事者双方が労働契約の延長に同意する場合において、労働者が期間の定めがない労働契約の締結を
    要求したときは、期間の定めのない労働契約を締結しなければならないとされていることです。
  給与について
    労働法によって、(イ)同一労働同一賃金の原則、(ロ)企業の賃金自主決定権、(ハ)最低額保障、
    (ニ)理由のない減額禁止、(ホ)休暇期間の給与保障が規定されている。
    更に、外商投資企業労働管理規定により、賃金の毎年の引き上げ、
    政府のガイドラインに基づく団体交渉を通じての金額の決定、
    従業員の個人所得税の源泉徴収等についての規定がされています。
  労働時間について
    1週間の平均労働時間については、40時間とされています。通常の労働時間では業務の遂行が困難な
    場合には、裁量労働時間性や変形労働時間制を採用することも可能とされています。
    残業については1日につき1時間を超えてはならず、特別の理由がある場合のみ1日につき3時間以内まで
    可能とされています。
    また、1ヶ月の残業時間が36時間を超えてはならないという制限も受けることになります。
  休日について
    休日に労働させる場合、同時間の振替休日を付与する必要があります。
    振替休日を与えられない場合と、法定休暇祝日(春節、メーデー等)割り増し賃金を支払わなければ
    ならないとされています。

(6)労働組合について
  外商投資企業は労働組合を設立する義務はありませんが、従業員側には労働組合を設立する権利が
  ありますので、従業員からの労働組合設立の申し入れがあった場合にはその設立を認めなければなりません。
  労働組合が設立された場合、企業側は給与総額の2%の労働組合経費の負担と活動場所の提供を義務付け
  られることになります。
  労働組合は企業ごとに組織され、上級の労働組合組織により指揮監督を受けることになっています。
  労働組合の役割は、労働者の権利保護と企業の発展への協力にあります。
  そのため、企業は経営管理及び会社の発展に関する重大な問題を検討するときに、労働組合に意見を聞かな
  ければなりません。
  また、従業員の賃金、福利厚生当従業員の利益にかかわる事項を検討する場合には、
  労働組合に代表を会議に参加させなければなりません。企業と従業員全体の「集団契約」を締結するのも
  労働組合の役目です。
  
  ※集団契約・・・企業と従業員全体との契約であり、報酬、労働時間、休憩時間、休日、保険、福利、労働安全、
    衛生、集団契約の期限等を規定するもの。手段契約は、全従業員に対して効力が及ぶ。個別の労働契約は
    集団契約と比べて従業員にとって不利になってはならないので、集団契約は、従業員の最低ラインを守る役
    割を果たしている。

(7)社会保険等について
  社会保険制度
    中国において外商投資企業が加入しなければならない社会保険とその内容は以下のとおりです。
  
  ・養老保険(退職年金保険)・・・企業の負担は給与総額の20%以内、従業員の負担は、4〜8%とされています。
  ・基本医療保険・・・・・・・・・・・・・企業の負担は政府が認可することになっていますが従業員の給与総額の6%
                      前後とされています。従業員の負担は本人の給与の2%となっています。
  ・労災保険・・・・・・・・・・・・・・・・・企業が従業員の給与総額の一定比率(1%を超えない)に基づいて納付し、
                       従業員は負担しないことになっています。
  ・失業保険・・・・・・・・・・・・・・・・・企業が賃金総額の2%、従業員本人が本人の賃金の1%を負担します。
  ・出産保険・・・・・・・・・・・・・・・・・企業の負担は、給与総額の1%を超えないことになっている。
  ・企業年金・・・・・・・・・・・・・・・・・養老保険を補充するための任意制度です。企業年金計画に基いて集めた
                      資金を企業年金基金とし 信託管理方式によって投資運用し、その収益で
                      年金基金を拡充することができます。

  その他の福利厚生
    ・住宅積立金・・・・・・・・・・・・従業員と企業の積立比率は、従業員の前年度平均賃金の5%を下回っては
                      ならないとされています。具体的には、省級の政府が定める比率に従います。
                      従業員は、毎月の給与から差し引きいて積み立てることになっています。
    ・労働組合費・・・・・・・・・・・・労働組合のある企業は給与総額の2%を負担しなければならないとされています。
    ・従業員福利奨励基金・・・・企業の負担比率は、当時階により決定されることになっています。

(8)中国における解雇等に関する法規制について
  当事者の合意による解除
    この場合は、特に法規制を受けない。しかし、後日、合意の有効性が争われると面倒になるので、
    合意書面の作成は慎重になるべきでしょう。

  無催告解雇
    以下の要件のいずれかに該当すれば、無催告解雇が可能です。
    ・試用期間中採用条件に符合しないことが証明されたとき
    ・労働規律又は就業規則等の社内規則の重大な違反があったとき
     ※解雇の有効性について紛争が発生しないように、何が「重大な違反」に該当するか就業規則等で
       明確にしておく必要があります。
    ・職務怠慢又は不正利得行為により、重大な損害を与えたとき
     ※この場合も同様に何が「重大な損害」に該当するか、予め就業規則等で定めておく必要があります。
    ・刑事上の責任を追及されたとき。

  催告解雇
    以下の場合には、催告解雇が可能である。ただし、対象労働者が「職業病又は業務上の負傷でありかつ
    労働力の全部又は一部の喪失が認定されたとき」、「病気に関する医療期間内にあるとき」、「女性従業員
    が妊娠期、出産期、授乳期にあるとき」のいずれかに該当する場合は制限されます。

    ・従業員が病気又は業務外の事由により負傷し。療養期間が満了した後にもとの業務に従事できず、
     使用者が別に準備した業務にも従事できないとき。
    ・労働者がその任務に堪えることができず、訓練又は職場の調整を行った後にあっても任務に堪えることが
     できないこと。
    ・労働契約の締結時に依拠した客観的な状況に重大な変化が生じ、それにより労働契約を履行することが
     できなくなった場合において、当事者が協議を行っても労働契約変更について合意に達しないとき。

  整理解雇
    以下の場合は、30日前に労働組合又は全従業員に状況を説明し、労働組合または従業員の意見を
    聴取した上で労働行政部門に届け出た後に人員を削減することができます。

    ・使用者が破産に瀕し法廷再建手続を行っている期間
    ・事業の状況に甚だしい困難が生じた場合
     →曖昧な要件なので、整理解雇を実施する前に管轄の労働局に確認する必要があります。

  従業員による労働契約の解除
    企業側が労働契約の規定に違反して報酬を支払わずまたは労働条件を提供しないときもしくは企業が
    労働を強制したときには、労働契約を一方的に解除することができます。

  経済補償制度について
    労働契約を解除する場合(契約の更新拒絶は含まれない)、労働者側の責任が重い無催告解雇を除いては、
    経済補償金の支払が必要となります。

    経済補償金 = 契約解除前12ヶ月の平均給与 × 勤続年数(12が上限)



5.事務所・マンションの賃借について

(1)事務所を賃借する場合
  事務所賃貸借に関する書類が、現地法人や駐在員事務所の設立手続きに必要になります。
  通常、外国企業が賃借できるオフィスは各地域で指定されていますので、
  受入機関や不動産業者に確認を行ったうえで選定を行うことになります。

(2)マンションを賃借する場合

  マンションの賃借形式には、ホテル形式のマンションと、外国人可能のマンションとを賃借する方法があります。
  マンションの賃借契約の内容は、大家との交渉で個別に変更できます。特に、エアコン類の負担については、
  交渉してみてもよいでしょう。また、発票(公式領収書)が不要だというと、家賃を値引きしてくれることもあります。



6.中国における会社の増資と減資

(1)増資手続き
  董事会決議
    この董事会においては、出席董事全員の賛成が必要とされています。
  審査認可機関による認可
    登録資本と総投資額の変更することになるので、定款(企業章程)の変更(合弁企業の場合は、
    合弁契約の変更も)が必要になります。そのため、審査認可機関による認可必要となります。
  変更登記
    登録資本金は営業許可証の記載事項であり工商行政管理局等での変更登記をする必要があります。
  出資検証報告書の入手
    出資金を払い込んだことを証明するものです。会計士に依頼します。
  出資証明書の発行
    合弁企業が出資検証報告書を入手した後、合弁企業から出資者に発行します。

(2)減資手続き
  実体要件の具備
    中国における会社の減資は、原則として認められず、減資を認める必要性の高い場合にのみに
    例外的に認められるにすぎないと認識しておくとよいでしょう。
    減資がみとめられる実体要件は以下の通りです。
    ・登録資本が過剰となっている状態(資本の有効活用を阻害、利益配当の負担が大)。
    ・減資による企業の正常な経営に影響を与えないと認められること。
    ・減資によって債権者の利益を損なわないこと。
    ・投資総額および生産経営規模を減少させる必要性があること。
  減資の手続き
    減資の手続きは、増資の手続きに以下の事項が追加されます。
    ・貸借対照表及び財産明細表の作成
    ・登録資本金減少の決議を行った日から10日以内に債権者へ通知
    ・決議後30日以内に新聞紙上で3回以上の公告
    ・債権者は通知書を受領した日から30日の間、通知書を受領していない債権者は最初の公告の日から
     90日の間、企業に対して債務の弁済または相当な担保の提供を請求可能。



7.中国における会社持分の譲渡

(1)会社持分の変更がある場合
  外商投資企業の持分の変更が生じる場合として、
   (イ)出資者と第三者又は相手方出資者における合意に基づき持分が譲渡される場合、
   (ロ)持分に設定された質権が実行されて持分が移転される場合、
   (ハ)出資者の破産、解散、合併等により、その出資者が保有す持分が第三者に承継される場合、
   (ニ)外商等私企業の増資又は減資により、その出資比率に変更が生じる場合があります。

(2)持分譲渡の流れ
  持分譲渡契約
    持分譲渡契約書の作成が必要となります。この契約書には、以下の事項を記載する必要があります。

    ・当事者の名称
    ・譲渡される持分の特定
    ・譲渡価格
    ・引渡し方法と期限
    ・譲受人の権利義務
    ・違約責任
    ・準拠法
    ・紛争解決方法
    ・効力発生条件
    ・解除条項
    ・契約締結(調印)の日時
    ・場所の記載

  他の出資者の同意
    持分を譲渡する場合、他の出資者の書面による同意が必要です。他の出資者には、
    持分の優先購入権が認められているからです。この同意は、持分譲渡契約書に記載されるのが通常です。

  審査認可機関の認可
    持分の譲渡する場合、企業の設立を認可した審査認可機関による認可が必要となります。
    認可申請は、企業(外商投資企業自体)が行います(⇔設立時は出資者)。
    申請には、董事会議事録、持分変更後の合弁契約、定款(企業章程)、企業の設立認可証書、営業許可証、
    董事の名簿が必要となります。
    審査認可機関の認可は、申請から30日以内に行われます。

  認可証書の変更
    認可を得た場合、企業は、持分譲渡の認可を得た日から30日以内に、
    認可証書の変更手続きを審査認可期間で行わなければなりません。

  登記の変更
    認可証書変更の日から、30日以内に工商行政管理局で登記の変更手続きを行います。



8.中国における会社の合併と分割


(1)合併・分割の意義・種類
  合併の意義・種類
    合併とは、複数の会社が法律に基づき1つの会社になる行為をいいます。
    会社の合併には、吸収合併と新設合併があります。
    吸収合併とは、1つの会社がその他の会社を吸収し、吸収した側は継続して存続し、加入側は解散する
    場合をいいます。
    新設合併とは、複数の会社が合併して1つの新たな会社を設立し、
    合併当事者である会社は、いずれも解散する場合をいいます。
  分割の意義・種類
    分割とは、1つの会社が複数の会社に分かれる行為をいいます。会社の分割には、新設分割と吸収分割が
    あります。
    新設分割とは、分割前の会社が解散し、分離した各社を新会社として設立する場合をいいます。
    存続分割とは、分割前の会社はそのまま存続し、その一部分を分離させて、1つまたは複数の会社を設立
    する場合をいいます。

(2)中国における会社合併の手続きの流れ

  ・董事会による合併決議。
  ・合併後の持分比率決定のための合併当事会社の価値評価。
  ・合併協議書の作成。
  ・審査認可機関へ会社合併の申請書類の提出。
  ・審査認可機関は申請書類受領後45日以内に仮認可の可否の通知。
  ・仮認可後10日以内に債権者に対して債務承継の通知書を発送し、かつ30日以内に前項発行の新聞で
   3回公告を実施。
  ・債権者は通知書の受領から30日以内、通知書を受領していない債権者は最初の公告から90日以内に
   企業に対して債務の弁済または相当な担保の提供を請求可能(減資と同様の債権者保護手続き)。
  ・期間内に債権者からの異議申立てがない場合、審査機関に対して、
   (イ)新聞に3回公告を掲載した証明
   (ロ)債権者に通知した証明
   (ハ)債権債務の処理状況の説明
   (ニ)審査認可機関が提出を求めるその他の文書を提出
  ・審査認可機関は、上記の文書を受領後、30日以内に認可の可否を決定。
  ・認可後30日以内に会社合併による解散、存続もしくは新規設立会社について、
   審査認可機関で関連する外商投資企業認可証書の返納、変更又は受領。
  ・登記機関で抹消、変更または設立登記。
  ・会社合併後、存続もしくは新設する会社は営業許可証を変更または受領した日より30日以内に
   会社合併により解散する会社の債権債務者に対して債権債務者変更通知の発送と全国紙での公告を実施。
   加えて、税務、税関、外貨管理局当の関連機関における登記手続き。

(3)中国における分割手続きの流れ

  ・董事会による分割決議。
  ・分割前の会社の董事会による分割後の会社に対する出資比率の決定。
  ・分割協議書の作成。
  ・審査認可機関へ会社分割の申請書類の提出。
  ・審査認可機関は申請書類受領後45日以内に仮認可の可否の通知をする。
  ・仮認可後10日以内に債権者に対して債務承継の通知書を発送し、かつ30日以内に前項発行の新聞で
   3回公告を行う。
  ・債権者は通知書の受領から30日以内、通知書を受領していない債権者は最初の公告から90日以内に
   企業に対して債務の弁済または相当な担保の提供を請求できる(減資と同様の債権者保護手続き)。
  ・期間内に債権者からの異議申立てがない場合、審査機関に対して、
   (イ)新聞に3回公告を掲載した証明
   (ロ)債権者に通知した証明
   (ハ)債権債務の処理状況の説明
   (ニ)審査認可機関が提出を求めるその他の文書を提出する。
  ・審査認可機関は、上記の文書を受領後、30日以内に認可の可否を決定する。
  ・認可後30日以内に会社分割による解散、存続もしくは新規設立会社について、
   審査認可機関で関連する外商投資企業認可証書の返納、変更又は受領を行う。
  ・登記機関で抹消、変更または設立登記を行う。
  ・会社分割後、存続もしくは新設する会社は営業許可証を変更または受領した日より30日以内に
   会社分割により解散する会社の債権債務者に対して債権債務者変更通知の発送と全国紙での公告を行う。
   加えて、税務、税関、外貨管理局当の関連機関における登記手続きを行う。

(4)会社の合併または分割を検討する時の留意点

  ・外商投資企業の合弁契約等に定められている出資義務が未履行の場合、及び生産・経営が開始されて
   いない場合、合併分割は認められません。
  ・中国の内資企業と合併する場合は、以下の要件を具備する必要があります。
    →会社法に基づく設立された有限責任会社又は株式有限会社であること。
    →出資者が、関連法規に基づく出資社資格条件に合致すること
    →合併後の会社における外資の比率が25%を下回らないこと。
    →合併協議の各当事会社が、合併する会社の従業員に対し十分な就業又は合理的配置を保証すること。
  ・合併または会社分割後の会社は、外商投資の関連規定に準拠している必要があります。
  ・合併または分割後の会社は審査認可機関、税務、税関等の機関の認可を得た後、
   合併または分割会社の享受していた各種優遇措置を享受できます。
  ・合併又は分割によって解散会社、新設会社が生じる場合、解散会社、新設会社の所在地にある審査認可
   機関の意見を求めなければならなりません。
  ・有限公司間で合併した場合は有限公司となります。株式会社(=股?公司)間で合併した場合は、株式会社
   となります。
   非上場の株式会社と有限公司が合併した場合は、株式会社、有限会社のいずれも選択可能です。
   上場の株式会社が合併した場合は、株式会社となります。
  ・株式会社間の合併または合併または合併後に有限公司となる場合の合併後の登録資本金は、合併前の
   和となります。
   有限公司と株式会社が合併して株式会社となる場合の登録資本金は、
   元の有限公司の純資産を合併後の株式会社の1株あたりの純資産に基づいて
   換算した持分額と元の株式会社の株式総額の和となります。



9.中国におけるM&A

(1)M&Aとは
  M&Aとは、Merger(合併) and Acquisition(買収)の略です。
  日本では、
  ・合併(新設合併、吸収合併)
  ・株式取得(株式譲渡、新株引受、株式交換)
  ・営業譲渡
  例に挙げることができます。
  広義には、業務提携に多用される、
  ・株式の持ち合い
  ・合弁会社の設立
  を含みます。

(2)中国におけるM&Aについて

  中国においても、M&Aが可能となり、中国進出方法の一手段として注目されてきています。
  中国においても、外商投資企業は、会社の合併(前述)と企業買収のいずれも可能となっています。

(3)中国における企業買収方法

  持分(株式等)買収
    持分取得については、会社の増資手続き、会社の持分の譲渡による方法が可能です。
    会社の持分を買収する方法が最もオーソドックスといえるでしょう。
    手続きの流れは、前述部分「6.中国における会社の増資と減資」、「7.中国における会社持分の譲渡」を
    参照してください。

  資産買収
    中国においては、日本と異なり、営業譲渡の制度は存在しません。個別に契約によって、
    売買当事者間の権利義務関係(競業避止義務等)を取り決める必要があります。債権債務関係の移転を
    伴う場合も個別に対応する必要があります。




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